公開情報

財団事業公開情報 多文化共生の推進と日本語普及 言語の調査研究活動 異文化理解の促進

事業概要報告書

第42期事業概要報告書

自 2014年4月 1日
至 2015年3月31日

はじめに

 当法人は,公益財団へ移行後,公益性の高い事業の推進をめざし,多彩な事業に取り組んでおります。2014年度の主たる事業は,(1)青少年の異文化理解と国際友好親善を通じての国際理解や友好促進,(2)言語の調査研究や講座を通じて言語学に関心をもつ学生,研究者などの人材の育成,(3)多文化共生のための日本語教育を通じた日本語学習の普及や地域活動などです。

 国際友好親善事業は43年目を迎え,引率者を含め当法人会員の中学生・高校生ら総勢887名をアメリカ・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド・中国・韓国の6ケ国への派遣,そして外国青少年受入れは北米・オーストラリア・中国・韓国・インドネシアの国々から青少年183名が来日しました。高校留学は,当法人会員の高校生38名が一年間,アメリカ・カナダでの留学生活を通じて貴重な異文化体験を行いました。海外大学生年代対象にしたインターンプログラムは,アメリカ,カナダ,オーストラリア,ニュージーランドの4ヶ国から大学生5名が来日し,1年間日本に滞在し,日本文化への理解と日本語学習に取り組みました。

 青少年国際交流は,家族ぐるみで長期的かつ継続的なプログラムとして青少年の夢を育み,自立心や世界に通じるコミュニケーション力を育てています。感性豊かな十代での異文化体験は,国際理解教育としても意義深く,外国青少年と異なるものを認め合いながら相互理解を深め,自己の成長を促す絶好の機会となっています。

 他団体への協力・支援活動は,NPO法人次代の創造工房が中心となり,各国大使館の協力のもとに東日本大震災の被災児童を対象した自立支援事業ーSupport Our Kidsプロジェクトが実施されていますが,被災地の中学生・高校生58名が海外6ケ国に派遣されました。参加者の海外ホームステイのためのオリエンテーションへの協力や,その他,当法人理事による東京都教育委員会主催事業での講演活動,および東京外国語大学多言語多文化教育センターの「多文化社会における専門人材の専門性」研究プロジェクトの研究協力員として参加をしました。

 言語の調査研究活動 ― 東京言語研究所は,1966年から言語学に関心をもつ学生,研究者などを対象に「理論言語学講座」を開講していますが,2014年度の講座は154名が受講しました。言語学の裾野を広めるために春期講座,集中講義,公開講座など特別講座も実施しましたが,夏期講座では,幅広い層の人たちに”ことば”に関心をもってもらうために「教師のためのことばワークショップ」を開催したり,地域の親子を対象とした“ことば”に関するスタンプラリー,絵本の読み聞かせなど,埼玉県立総合教育センター主催の一般公開イベント出展事業に参加しました。

 地域の多文化共生のための日本語普及活動 ― ラボ日本語教育研修所は,外国人のための日本語教育「本科コース」を開講し,日本語普及に努めました。受講者数は,東日本大震災後,一時激減しましたが,2014年度はかなり回復し,アジア11ヶ国と地域から留学生85名が参加しました。短期日本語研修は,北米・ヨーロッパ・中近東・アジアの国々から66名が来日しました。地方自治体との関わりとして,川口市主催による市民講座「盛人大学」の国際コースの運営と企画への協力,講座への講師派遣,および日本語ボランティア日本語講座へ当研修所の日本語教師を派遣しました。また,(財)日本語教育振興協会主催「2014年度日本語学校教育研究大会」が実施されましたが,同研修所事務局長は実行委員長として同大会の企画・運営に関わり,同研修所所属の日本語教師は口頭発表に積極的に参加し,日本語普及に努めました。

 2014年度事業運営は,残念ながら大幅な赤字決算となり,財政的に厳しい状況を迎えましたが,今後は各事業ごとの収支相償の実現と原価管理およびコスト意識を図り,より健全な事業運営に努めます。事業を支えていただいた理事・評議員の方々,および国内外の青少年国際交流関係者にあらためて感謝申し上げます。第42期事業の概要は以下のとおりです。

1.青少年の国際交流活動〜 一ヶ月のホームステイ相互交流
a.アメリカとの交流

 43回目のアメリカとの青少年相互交流は,2014年7月下旬より1ケ月間,引率者を含め中学 生・高校生の当法人会員636名が米国33州を訪問しました。提携団体は米国4-Hクラブ・ペン シルバニア州メノナイト協会・ニューイングランドホームスクール連絡会議・テキサスグローバルエデユケーション協会・ユタ・プレミアム国際交流協会・アイオワ州グローバルフレンドシップ協会,ディスカバー・カリフォルニアの7団体です。2014年度は,新たにアラバマ 州,オクラホマ州,ニューヨーク州が新しく交流に参加しました。
 同年7月上旬,米国21州より引率者3名と米国青少年40名が来日し,全国の当法人会員宅にホームステイをしながら,各地の青少年と交流を行いました。

b.カナダとの交流

 39回目のカナダとの青少年相互交流は,2014年7月下旬より1ケ月間,引率者を含め中学生・高校生の当法人会員113名がカナダ5州を訪問しました。提携団体は日加青少年交流委員会,コンタクト・カナダの2団体です。
同年7月上旬,カナダ2州から引率者1名とカナダ青少年7名が来日し,全国の当法人会員宅にホームステイしながら各地の青少年と交流を行いました。

c.オーストラリアとの交流

  32回目のオーストラリアとの青少年相互交流は,2014年7月下旬より1ケ月間,引率者を含め当法人会員の高校生29名が最大都市シドニーと首都キャンベラをはじめ,ニューサウスウェールズ州各地を訪問し,高校生がいる家庭にホームステイしながら現地高校に3週間通学しました。提携団体はニューサウスウェールズ州日本語教師協会です。
 同年12月中旬より2015年1月上旬までの3週間,ニューサウスウェールズ州シドニーとキャンベラから引率者1名と高校生6名が来日しました。首都圏在住の当法人の会員宅にホームステイしながら受入れ家庭と一緒に日本のお正月を楽しみました。

d.ニュージーランドとの交流

  13回目のニュージーランドとの青少年相互交流は,2014年7月下旬より8月中旬まで4週間,引率者を含め当法人会員の中学生・高校生・大学生35名が北島タウランガ市を訪問しました。
 中学生の参加者は男女共学の中学校,高校生はカレッジと呼ばれる男女別の高校に通学し3週間の短期留学と,雄大な自然とマオリ文化に触れる機会をもちながらホームステイを通じて有意義な交流を行いました。提携団体は交流団体レッツホームステイとタウランガ市のIntermediate School (19名), Boys College (4名), Girls College (9名) の各学校です。
 同年12月中旬より2015年1月上旬3での3週間,タウランガ市から引率者1名と高校生14名が来日し,中部,関西圏在住の当法人会員宅にホームステイしながら受入れ家庭と一緒に日本のお正月を楽しみました。

e.中国との交流

  第29回目の中国との青少年相互交流は,2014年3月下旬から4月上旬までの9日間,引率者を含め小学生,中学生,高校生,大人など,当法人会員20名が上海市と北京市を訪問しました。提携団体は,上海外国語大学付属外国語学校と北京市月壇中学です。上海で4泊ののち北京で4泊し,子どもはそれぞれの学校の生徒宅にホームステイしながら中国の青少年と交流し,相互理解を促進しました。
 2014年7月下旬から8月初旬まで北京市月壇中学から引率者を含む10名の青少年が来日し,関西圏の当法人会員宅にホームステイして交流を行いました。当初,2015年1月初旬〜中旬に上海外国語学校の学生が来日予定となっていましたが,学校側の事情により来日が見送られました。

f.韓国との交流

  再開14回目の韓国との青少年相互交流は,2014年7月下旬の11間,引率者を含め小学校高学 年・中学生・高校生など当法人会員29名がソウル市を訪問しました。韓国ラボ会員宅にホームステイをしながら,キャンプへの参加を通じて韓国青少年と交流し,相互理解を図りました。当初大人を含む当法人会員10名が釜山を訪問予定でしたが,受入れ側の事情により,セウォル号事件の影響で釜山への訪問は中止となりましたが,該当者は全員ソウルに訪問しました。提携団体はソウルに本部を置く「社団法人韓国ラボ」です。
 2014年7月下旬から8月初旬まで,引率者3名と韓国青少年21名が来日し,当法人会員家庭にホームステイし交流を行いました。

g.オレゴン国際キャンプ

  18回目のオレゴン国際キャンプは,2014年7月下旬から8月中旬まで3週間,引率者2名と当法人会員の中学生・高校生23名が参加しました。米国ノースウエストの大自然に囲まれたオレゴン州で同世代のアメリカ青少年との交流や多彩な野外活動を通して“自然から学ぶ”ことを体験しました。キャンプ体験は自らの限界や挑戦する力を見直すよい機会となっています。提携団体はオレゴン州ポートランドに本部を置く「オレゴン科学産業博物館」(OMSI)です。

2.青少年の国際交流活動〜一年間の長期交流プログラム
a. ラボ高校留学プログラム

 26年目を迎えたラボ高校生留学プログラムは,米国国際教育派遣基準協会(CSIET)の認可 基準に基づき実施され,米国国務省認定の複数の留学機関に留学しました。

(1) 第26期高校留学(2013年7月〜2014年7月)
 第26期の北米(アメリカ,カナダ)留学生29名は1年間の留学生活を終え、2泊3日の帰国プログラムに参加した後に米国留学生は2013年6月中旬に,カナダ留学生は同年7月上旬に帰国しました。

(2) 第27期高校生留学(2014年7月〜2015年6月)
<米国> 米国4-H留学生5名は,2014年7月下旬に出発し,ワシントン州シアトルで1週間の到着時プログラムに参加した後,各州に移動しました。ASPECT留学生14名は8月初旬に出発し,ロスアンゼルスで1週間の到着時プログラムに参加した後,各州に移動しました。PAX留学生9名は,8月中旬出発し,ニューヨークで3日間の到着時プログラムに参加後,各州に移動しました。現在,各団体への留学生は各州のホストファミリィ宅に滞在しながら充実した留学生活を送っています。
 2015年6月中旬,ASPECTとPAXの留学生はサンフランシスコで,米国4-Hの留学生はシアトルでの2泊3日の帰国前プログラムに参加した後,帰国予定です。

<カナダ> カナダ留学生10名は,2014年8月中旬に出発し,ブリティシュコロンビア州バンクーバーで2週間の英語研修を受けた後,各州に移動,ホームステイをしながら留学生活を送っています。2015年6月末,2泊3日の帰国前プログラムに参加後,帰国予定です。

(3) 第28期高校留学〔2015年7月〜2016年7月)
 第28期留学生募集は,2014年8月中旬から開始され,47名が応募しました。9月に全国6ヶ所で第1次選考試験が,11月に全国5ヶ所で第2次選考試験が行われました。交流団体の最終的選考を終え,米国留学生19名,カナダ留学生6名が決定しました。2015年3月には全国5ヶ所で留学生・保護者を対象とした第1回留学オリエンテーションが実施されました。

b. 高校留学のための通信教育「ブリッジ・プログラム」

 高校留学希望者や英語に興味をもつ中学生・高校生を対象にしたブリッジ・プログラムは,留学準備コースとして英語聴取力,文法,読解力を高めるための8ヶ月間の通信教育を実施しています。2014年度は,中学生,高校生及び青少年指導者(ラボテューター)ら計107名が受講しました。また中学生・高校生のラボ会員を対象に英語力診断の「トライアルテスト」を全国各地で実施し,226名が受験しました。

c. 大学生年代の交流プログラム–インターンプログラム

 海外の大学生年代が対象で,日本に1年間滞在しながら活動するインターンプログラムは,27年目を迎えました。日本人家庭にホームステイしながら,主に地域の青少年活動へ参加と日本文化の研究を通して相互理解を促進しています。日本での体験は参加者の勉学や進路選択など,人生に大きなインパクトを与えています。2013年度の概要は以下のとおりです。

<北米>
2013年9月にアメリカから2名,カナダから1名が来日し,1年間のインターン・プログラムを終え,2014年8月下旬に帰国しました。同年9月にアメリカから2名,カナダより1名が来日,ホームステイを楽しみながら日本文化を学んでいます。2015年8月に帰国予定です。

<オセアニア>
2014年2月にオーストラリアとニュージーランドからそれぞれ1名ずつ来日し,1年間のプログラムを終え2015年1月に帰国しました。同年2月初旬にオーストラリアから2名が来日しました。現在,日本人家庭でのホームステイを楽しみながら日本文化を学んでいます。2016年2月に帰国予定です。

3.その他
a. ラボ国際交流のつどいの開催

 2014年3月から4月にかけて,2014年度ラボ国際交流参加者を対象に「ラボ国際交流のつどい」が外務省の後援を得て,札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・四国・福岡の全国8ケ所で開催されまし た。2015年3月に開催された首都圏の「ラボ国際交流のつどい」には,参加者,家族,ラボ関係者ら約2,000名が集い,来賓として臨席したアメリカ,カナダ大使館代表,受入れ団体代表の,アイダホ州4-H青少年教育プログラム責任者のジェームス・リンドストローム氏から参加者への激励メッセージが伝えられました。 またニュージーランド大使,オーストラリア大使館,韓国大使館韓国文化院院長より,激励メッセージをいただきました。

b. 全国引率者会議の実施

 2014年5月中旬に,2014年度ラボ国際交流の引率業務を行う事務局スタッフ,チューターシャペロン,カレッジリーダー74名を対象に1泊2日での合同引率者会議を開催し,引率者の役割と任務の確認,異文化対応力を身に付けるワークショップなどを実施しました。別途,同会場で全国事務局スタッフ会議,全国カレッジリーダー会議を実施しました。

c. 交流団体との合同委員会の実施

(1) ラボ・米国4-Hクラブ合同委員会

  • 2014年11月,米国カリフォルニア州で米国4-Hとの合同交流委員会が開かれ,当法人スタッフ6名,青少年指導者(ラボテューター)1名が参加しました。青少年指導者は国際交流の意義に関するプレゼンテーションを行い,相互理解の促進に努めました。
  • 2015年2月,米国4-Hとの春会議が開催され,在京の当法人スタッフ2名を,米国アリゾナ州ツーソンで開催のボードメンバー会議とスカイプでつなぎ,話し合いを行いました。

(2) アメリカ・ニューイングランド交流責任者との合同委員会
 2014年11月,マサチューセッツ州ボストンでニューイングランド・ホームスクール担当者との合同委員会が実施され,当法人スタッフ2名が参加しました。各州交流担当者と夏の交流の成果と課題などを話し合い,2015年度交流に向けての確認を行いました。

(3) その他団体との合同委員会
 上記の交流団体との合同委員会の後に,カナダ・バンクーバーでコンタクトカナダとの担当者会議を行い,交流の評価と課題の共有と次年度の準備を行いました。

(4)交流担当者の来日
 2014年11月,マサチューセッツ州ボストンでニューイングランド・ホームスクール担当者との合同委員会が実施され,当法人スタッフ2名が参加しました。各州交流担当者と夏の交流の成果と課題な米国4-H事務局責任者の川口陽子氏が7月に来日,9月には同事務所担当者クリスタル・ヘラルド氏が来日し,北米交流の運営について話し合いをしました。また,ニュージーランド交流責任者のスチワート・カウンディ氏が6月に,9月には同交流担当者のサチコ・ハーダルカー氏が来日し,ニュージーランド交流促進のための話し合いをしました。

4.他団体への協力・支援
a. 東日本大震災の被災児童に対する自立支援事業への協力

  東日本大震災後,被災児童の継続的な自立支援を行うために各国大使,特定非営利活動法人「次代の創造工房」が中心となり,実施されているSupport Our Kidsプロジェクト活動は 4年目を迎えました。当法人は2012年度から同事業に協力・支援を行っています。具体的には,ホームステイプログラム運営のための企画委員としての関わり,参加者派遣の出発前オリエンテーションへの協力・支援を行いました。

○2014年度海外派遣の概要
国名 訪問地 日程 参加者数
フランス ルマン市 6/15〜6/29 10名
アイルランド ダブリン市 7/24〜8/9 10名
カナダ トロント市 8/6〜8/22 10名
ニュージーランド オークランド・
クライストチャーチ
8/6〜8/21 10名
スイス・サンマリノ 6名
アメリカ シアトル・WDC 3/16〜3/29 12名
b. 埼玉県川口市主催「盛人大学」への運営協力(6.日本語教育事業・c.地域貢献活動で掲載)

 「盛人大学」国際コース運営について,外部機関として早稲田大学早田教授とともに平野理事長が,市担当者や地元関係者で構成されている「盛人大学運営委員会」の構成メンバーとして関わり,同大学の運営に協力・支援を行いました。

c.その他
  • 東京都教育委員会主催事業での講演活動
    当法人小山理事が東京都教育委員会主催の平成26年度人権教育研究協議会で「多文化共生の学校づくり」というテーマで学校関係者400名に講演を行いました。(5月15日)
  • 東京外国語大学多言語多文化教育センター研究会への協力
    当法人の小山理事が東京外国語大学多言語多文化教育センター研究センター主催の多文化専門人材認定制度研究会メンバーとして,研究会に参加しました。(6月24日)
  • 宮城県県会議員の視察
    宮城県県会議員の境恒春氏が当法人事務所を訪問し,グローバル人材の育成と青少年国際交流の実情に関して,平野理事長と懇談しました。
4.東京言語研究所の活動
a. 理論言語学講座

  1966年に開設された理論言語学講座は,言語学の基礎的な研究と基本的な教育を強化し, 言語学に関心を持つ有能な人材を育成することを目的に実施しています。2014年度理論言語 学講座は,5月12日から2015年1月5日まで大津由紀雄先生(慶應義塾大学名誉教授/明海大学副学長)の「言語学入門」,池上嘉彦先生(東京大学名誉教授)の「認知言語学」等14講座が開催され,延べ154名が受講しました。また,演習形式講座が開講され,3名が受講しました。

b. 春期講座

 春期講座は,2日間で受講者に現代言語学の主要な研究領域やアプローチを紹介し,受講者を魅力ある言語学の世界へ誘うことを目的に実施されています。2014年度は,4月26日・27日に15講座を開講し,受講者は116名でした。

c. 特別講座
(1)公開講座

 公開講座は言語学研究の裾野を拡げることを主な目的として実施しています。2014年度は3講座を開催し,112名が受講しました。

  • 第1回公開講座(2014年6月28日)梅田聡氏(慶應義塾大学文学部教授)
    演題:『前頭葉における言語機能』 
  • 第2回公開講座(2014年10月11日)森山卓郎氏(早稲田大学文学学術院教授)
    演題:『現代日本語の敬語とコミュニケーション』
  • 第3回公開講座(2015年2月21日)川原繁人氏(慶應義塾大学言語文化研究所専任講師)
    演題:『実験音韻論への招待〜理論言語学と実験言語学の対話〜』
(2)夏期講座

 夏期講座「教師のためのことばワークショップ」は,言語学以外の研究分野から講師を招聘し,「論理的思考力の育成」をテーマに開講し,受講者は36名でした。

日時 2014年8月9日・10日
講師 西山佑司氏(慶應義塾大学名誉教授)内田伸子氏(お茶の水女子大学名誉教授),内村直之氏(科学ジャーナリスト),久保野雅史氏(神奈川大学准教授)末岡敏明氏(東京学芸大学附属小金井中学校教諭)
コーディネーター 大津由紀雄氏(明海大学教授)
(3)集中講義

 集中講義は,一つの分野を2日間かけて集中的に学ぶことができ,2014年度は2講座を開講し,41名が受講しました。

  • 第1回集中講義(2014年9月6,7日)田窪行則氏(京都大学大学院文学研究科教授)
    演題:『琉球語宮古池間方言を学ぶ』
  • 第2回集中講義(2015年3月28,29日)千葉修司氏(津田塾大学名誉教授)
    演題:『ことばの観察を通して心を探る〜英語の仮定法現在を中心に〜』
(4)その他

  2014年10月18日に開催された埼玉県立総合教育センター公開行事に東京言語研究所として出展しました。小学生年代の子ども向けにことばの不思議や面白さを紹介するブースを設けました。150名を超える参加者が来場しました。

5.ラボ日本語教育研修所の活動―多文化共生のための日本語普及と支援活動
a.外国人のための日本語教育
○長期コース

  外国人のための日本語教育「本科コース」(週20時限)は,春学期(2014年4月7日〜6月20日),夏学期(7月1日〜10月3日),秋学期(10月14日〜12月19日),冬学期(2015年1月13日〜3月20日を開講しました。受講者は,韓国・中国・ベトナム・ネパール・モンゴル・アゼルバイジャン・ミャンマー・バングラデシュ・マレーシア・台湾・チベットの11の国と地域からの来日者です。学期ごとの受講者数は75〜85名でした。2015年3月に「本科コース」を修了した留学生25名中17名が日本の大学・大学院,専門学校に進学しました。

○短期日本語研修コース

1. インドネシア日本文化ツアー
 4月1日から4月8日までの8日間,インドネシアから高校生15名,引率教師1名,父兄代表1名,コーディネーター1名(Youth Exchange Indonesiaスタッフ)が「日本文化体験」を目的に来日し,日本語学習,日本文化ツアー,当法人会員の日本人家庭での3泊4日のホームステイを体験しました。

2. 北米青少年日本語研修プログラム
  北米青少年日本語研修プログラムは,日本語学習とホームステイが直結したカリキュラム構成となっています。6月16日から7月9日までの3週間,アメリカ・カナダから14歳から19歳の青少年23名と引率者2名が参加しました。

3. ラングブリッジ日本語研修プログラム
 7月14日から8月1日までの3週間,米国・カナダ・イギリス・シンガポールから,引率者1名を含む23名が本プログラムに参加しました。カナダのラングブリッジ教育センターが運営する青少年国際交流プログラムに応募した学生の中から,日本語や日本文化に興味をもつ青少年が来日し,当法人会員宅にホームステイをしながら日本語を学びました。

4. オーストラリア短期日本語研修
  今期初めて,9月23日から10月1日までの9日間,シドニーの男子高校生5名が,当法人会員宅にホームスティをしながら日本語を学びました。

b.外部機関への講師派遣

 特定非営利活動法人アジア科学教育経済発展機構から委託を受け,アジア各国から日本政府 の金融庁に派遣された研修員へ日本語を学ぶ機会を提供するため,2014年7月30日から2015年3月24日にかけて計20回,当研修所の日本語講師を金融庁に派遣しました。

c.日本語教師養成講座

 埼玉県川口市より委託を受け,日本語ボランティアとして地域貢献を目指す人たちを対象に,5月23日から6月20日までの毎週金曜日,「日本語ボランティア入門」講座(全5回)を開講しました。参加者は30名でした。なお,本年度は,2015年度に試行する「日本語教師スキルアップ講座」の企画検討を行いました。

d.地域貢献活動

(1) 川口市・市民講座「盛人大学」への支援活動
 当法人の平野理事長が「盛人大学」の運営委員会メンバーとして,日本語教育研修所の青木所長が副実行委員長兼「国際コース」作業部会長として,川口市主催「盛人大学」の運営に協力・支援を行いました。また,平野理事長・石井恵理子評議員・日本語研修所職員2名が講師として講座を担当しました。2015年3月に開催された平成26年度「盛人大学」卒業式には,当法人から平野理事長ならびに関係者が参列しました。 

(2) 川口市「在住外国人サポートネットワーク」会議への参加
 川口市で在住外国人支援等を行う団体の情報共有を目的に設立された「在住外国人サポートネットワーク」会議に当研修所事務局長が参加しました。

e.研修・研究活動

当研修所黒崎事務局長が,(財)日本語教育振興協会主催の日本語学校教育研究大会の実行委員長として企画・運営に関わるとともに,大会の中で同研修所日本語教師が日頃の研究成果を発表しました。また,当法人の小山理事は,東京外国語大学多言語多文化教育研究センターの「多文化社会における専門人材の専門性」研究プロジェクトに研究協力員として参加しました。

f.その他

東京女子大学日本語教師養成課程の受講学生6名を,5月13日から7月16日まで教育実習生として受け入れました。また,学習院大学文学部日本語日本文学科で日本語教育を学ぶ学生の授業見学を受け入れました。11月27日,28日の2日間で計9名が来校しました。

6. 広報誌「ラボの世界」の発行

広報誌「ラボの世界」は異文化理解の促進のために年4回発行し,会員や公共教育団体に配布しています。2014年度発行「ラボの世界」概要は,以下のとおりです。

a, 2014 Summer Vol. 265 2014年 6月12日発行

 10代とともに〜松沢哲郎氏(京都大学霊長類研究所教授・日本モンキーセンター所長・理学博士),中国交流報告,国際交流事前活動報告,理事・評議員会報告,ラボ高校留学プログラム〜応募から帰国まで,東京言語研究所集中講義,第3回インドネシア文化交流,世界の国から〜フィリピン,多文化共生社会をめざして(演劇を通したコミュニケーション)

b, 2014 Autumn Vol. 266 2014年 9月25日発行

10代とともに〜松岡孝治氏(演出家),東京言語研究所「教師のためのことばワークショップ」リポート,北米インターン紹介, 夏の交流速報,ニュージーランド交流特集,夏の受入れレポート(受入れ家庭),高校留学帰国者リポート

c, 2014 Winter Vol. 267 2014年12月11日発行

10代とともに〜梶原しげる氏(フリーアナウンサー),日米合同会議報告,東京言語研究所リポート,地平線白書(各国国際交流リポート),大学生からの発信〜カレッジ・リーダーの国際交流,オーストラリア高校生短期日本語研修,世界の国から〜モンゴル,多文化共生をめざして〜外国人が集う図書館

d, 2015 Spring Vol. 268 2015年 3月12日発行

10代とともに〜吉村作治氏(エジプト考古学者・東日本国際大学副学長・工学博士)一般財団法人ラボ国際交流センター理事長挨拶,理事・評議員会 報告,オーストラリア,ニュージーランド青少年受入れ体験記,ラボ日本語教育研修所〜学習院大学生見学記,世界の国から〜マレーシア,多文化共生社会をめざして〜外国人児童のために,ラボ・インターンからの手紙,オセアニアインターン紹介,東京言語研究所理論言語学講座案内

以上